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「私を…にして頂きたく存じます」
そう言うと、両腿に手を置き頭を小さく下げた。
「それは…覚悟が決まったと捉えて良いんだな?」
土方は目を細め、botox 香港 桜花の真意を探るような視線を向ける。桜花はしっかりと頷いた。
前に見たような迷いは無いように見える。まるで消し去ったかのように、澄んだ目をしていた。
開き直った、悟った、どのような言葉が当て嵌るのかは分からない。
どんな心境の変化があったのか土方は気になったが、それを追及することはしなかった。
その覚悟を疑うような真似は絶対にしたくなかったからである。それくらいの信頼は向けられていた。
「一つだけ、聞かせてくれねェか。お前さんの志は…目指すところは何だ」
「この時代…この国で起こることをこの眼で見ることです。そうすれば、生きる意味が分かると思うので」
その言葉に、土方は昔の自分の姿を重ねる。
多摩の地を練り歩いて薬の行商をしていた日々では、異人が何処に来ただの、幕府のお偉いさんが切り殺されただの、そんな話しを聞いても雲の上の話しとしか思わなかった。
しかし、心の何処かではこのまま薬売りで生涯を終えることにとてつもない嫌悪感を覚えていた。
身を立てることも、この眼で日ノ本に何が起こっているのかも見ることも出来ず、死んでいく未来は我慢がならなかったのである。
このもこのまま埋もれていくのを良しとしなかったのだろう。こういう目をした奴は伸びる、と土方は口角を上げた。
「…分かった。後日、入隊試験を実施する。一度入隊すれば、背を向けることは許されねェ。男を見せてくれよ」
その言葉に、桜花は深々と頭を下げる。そして部屋を後にした。後日、桜花の入隊試験が行われた。
八木邸の使用人ながらも、新撰組の稽古に毎日のように参加していた桜花の存在を知らぬ者は最早いない。
そして見目と、人当たりの良さは隊士の覚えも良かった為か、その試験は巡察担当隊士以外の全員が見学していた。
新撰組へ入隊する為の条件として、剣術の腕は差程重視されていない。求められるのは、果敢であることだけだった。
武士として、敵に背を見せないことや勇気と度胸があること。それが重要視されている。
しかし、土方は敢えて桜花の入隊試験に、目立つような試合を組んだ。
それは、例え隊士からの覚えが良くても、その見目で舐められてしまうことを懸念したからである。実際にの遊び場じゃない、と疎ましく思っている隊士も居た。
そこで稽古では埋もれてしまう強さを、存分に発揮させてみようと考えたのだ。
桜花の試合相手は斎藤である。
刃引きされた真剣を用いて行うことになり、二人は向かい合った。
「…この日を待ち侘びていたのやも知れぬ。あんたのような腕を持つ男は武士として評価されるべきだ」
鋭い眼光を飛ばしながらも、斎藤の口角は僅かに上がっており、何処か楽しげである。
「あは…斎藤先生はいつもそう言って下さいますね。お手柔らかに、と言いたいところですが…。全力でお願いします」
桜花は笑みを浮かべ、一礼した。顔を上げるともうそこに笑みは無い。斎藤をも喰らい尽くさんと言わんばかりの真剣な双眸で目の前の相手を見詰めた。
この細い身体の何処にその様な殺気を秘めているのかと、観衆がざわつく。
松原の仕切りで試合が始まった。何度も白刃が交わり、火花すら舞う。
新撰組でも随一の剣客とされる斎藤と互角に戦っていることに、更にどよめきが強くなった。
まるで稲妻のように容赦ない剣さばき、鳥のように軽やかな足取りに、いつしか観衆は魅せられていく。
二人は距離を取った。息を整える暇すら与えまいと、仕掛けたのは桜花である。