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をみている。
たしかにすごい。ゲームソフトにでてくるような、青龍刀をふりかざした関羽である。フィギュアといってもいい。あの立派な髭まで再現されている。あの時代、ともにのもとで戦い、みつめてきたように、飴細工の関羽はいきいきとしている。
うーむ。肺癌第四期平均壽命 異世界転生というよりかは、俊春の転生前はあの時代の武将だったのかも。
「おおっ!こいつぁすげぇ。かっこいいじゃねぇか」
そして、この時代に生きる者のフィギュアができあがった。
俊冬から手渡され、自分を模した飴細工をみ、恥ずかしげもなく「かっこいい」を連発する副長。
「すごい。似ている」
斎藤も称讃している。そこは、かっこいいところではなく、似ているを強調するところがビミョーであるが。
そのあと、双子はつくりつづけ、みな、大喜びしていた。
斎藤には「鬼神丸」のフィギュアを、島田には単純に飴の棒を大量につくり、そして、野村には・・・。
俊冬がせっせとつくるその横で、野村はわくわくしながらみつめている。
かれのリクエストは、「セクシー・ガール」。さすがは、現代っ子にしてバイリンガルな野村である。そして、それにさして疑問の一つもかえさずつくりはじめる俊冬。
「おおおおっ!」
その出来栄えに、興奮状態の男たち。厳密には、成人男子たち。
すでに陽は暮れ、だれかが篝火を準備してくれたらしい。
その篝火の光を吸収し、飴細工がきらきらしている。
「ジーザス。セクシー・ダイナマイト・バディ!」
ちょっ、野村・・・。
もしかして、」
市村と田村が、なにげに現代っ子っぽく飴細工を表現する。
たしかに、ナイスバディ、豊満な真っ裸の女性が・・・。
女たらしもそうでない者も、われもわれもとみたがる。村の女性陣が、それを遠巻きにみながらひそひそ話をしている。
きっと、「男はもう」と苦言をていしているのであろう。
そして、やっとおれの番に・・・。
「なんで、八郎さんなんです?」
伊庭八郎のフィギュアである。どうせなら、腕や脚の関節が稼働してくれたらいいのに・・・。
俊春から手渡され、ビミョーな気分になる。
でも、これは保存版だ。あ、いや、たとえこれが犬であろうと猫であろうと、きれいな飴細工である。すぐに舐めてしまうのは、もったいなさすぎるではないか?そういう意味での保存版であることは、いうまでもない。
もっとも、それはみなおなじである。その日は、大切にもってかえったのはいうまでもない。
ちなみに、安富は馬であった。当然のことながら。 翌日、松本良順がやってきた。関東郡代の書簡を携えて。
松本にしてみれば、ちょうどいいきっかけであったのだろう。
局長をはじめとした傷病者の診察もかねての訪問である。
もちろん、みんなで歓迎する。
佐々井半十郎のことはよくわからない。旗本で、関東の代官の一人であると記憶している。
「つまり、このままここで息を潜めていろ、と?」
局長は、書簡をよみおわるとそれを副長に手渡す。それは、副長から俊冬、俊春へと順にまわってゆく。
「そういうこった。くやしいが、江戸城の明け渡しのこともある。それに、彰義隊も不穏な動きをみせてやがる。幕閣も、これ以上不安の種は抱えたくねぇんだろう」
松本は、肩肌脱ぎになった局長の肩や腕をさわりつつ、いまいましげにいう。
「よしっ。肩のほうは、だいぶんといい。まぁ、以前のように剣をふるうとまではいかねぇが、普通に生活する分には不自由はあるまい」
「これも、法眼のおかげです」
「いやいや。おまえさんが、おれのいいつけをちゃんと守ってるからだ。なぁ俊春?」
俊春ののことをしった局長は、だれよりも心を痛めた。耳朶につづき、片まで、と。それはもう、この世のおわりのように嘆いたのである。その結果、本人が手遅れだと拒否っているにもかかわらず、松本に話をし、強制的に診てもらったのである。
もっとも、それでよくなるというわけではない。結局、松本もどうすることもできず、耳朶はきこえぬままであるし、右はみえぬままである。
俊春は、松本の嫌味を口の形でよみ、真っ赤になってを膝の上に落とす。
「それで、返事はどうする?」
「潜むくらいなら、いったん江戸から陣を移しましょう。流山のほうに、昔、懇意にしていた人物がおります」
「流山?局長っ、流山って・・・」
思わず、話しをさえぎってしまった。
だめだ。流山だけは、いってはいけない。
その思いが、つい言葉になってでてしまったのである。
「主計、驚かすでない」
局長は、やさしい笑みを浮かべる。
「局長、おれも流山は反対だ。あっちはよくねぇ」