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第5連隊、クズ連隊 それでも死ぬ時ゃ、立派に死んだ 逝った仲間に思いをすれば 明日の命も要りゃしねえ歌いつつ、彼等は胸の中で、かつてタゴロローム司令部から受けた卑劣な扱いに対する憤りの炎を掻き起していた。今こそ復讐の時は来た、後は野となれ山となれ。反乱?、知った事か。国家への忠誠?、知った事か。ただただ憎いあいつらに、思い知らせてやるだけだ。悪逆無道のあいつらに。その後ろからやって来る寝返り組は、それに比べると戦意が落ちるのは否めない。しかし、ハンベエや元第5連隊生き残り兵士の勢いに呑まれて粛々と付き従っていた。途中、タゴロロームか優思明副作用らの脱走兵をぽつりぽつりと拾った。ハナハナ山に向かって逃げていた脱走兵は、逆にタゴロロームに向けて進軍してくるハンベエ達に少し驚いたようだが、先頭を進むハンベエやドルバスを見ると、向こうから、擦り寄るようにやって来た。それらの兵士からの情報を総合すると、タゴロロームの軍は総勢8000人ほどである。敵はどうやら、ハナハナ山での戦いを意識して、投石機や弩の類いまで運んでいるらしい。(敵は、まさか俺たちが迎撃に出て向かって来る、などとは思ってもいまい。ふい撃ちできそうだな。)先頭を進みながら、ハンベエは少し安堵した。8000人対2000人である。奇襲でもしなければ勝ち目は薄いであろう。ハンベエに付き従う兵士達にしても戦いの前途に不安を持っていないわけではあるまい。くどいが、8000対2000の戦いである。通常、倍の敵に勝つ事は難しいと言われている。戦略戦術を学んだ事のない兵士達でもその程度のコトワリは解る。いや、むしろ複雑な戦術を論じない兵士達であればこそ、単純な数の比較による強弱を強く意識していた。だが、その一方でハンベエに付き従っている兵士達は、負けるとも思えないのであった。ハンベエは言った。『この俺は自ら戦って敗れた事はない。』と。いみじくも、ハンベエに付き従う兵士達はその言葉が嘘でない事をタゴロローム守備軍司令部とハンベエの争いの中でまざまざと見せ付けられていた。 ハンベエに寝返った兵士達の本能はタゴロローム守備軍よりもハンベエの方を強者として選んだのである。そのような兵士達の揺れ動く心理を知ってか知らずか、ハンベエはほとんど口を開く事も無く、兵士達の先頭を足早に進んでいた。 ハンベエは足が早い。付き従う兵士達の中には徐々に遅れる者も出始めていた。しかしながら、ハンベエは進軍の速度を緩めようとはしなかった。(急がせなければならない。)とハンベエは考えていた。この若者は、実は今の時点では、元々の第5連隊以外の兵士、つまりタゴロローム守備軍から寝返って参軍して来た兵士達に信を置いていなかった。さもあろう、今は勢いに駆られてハンベエに付き従っているが、少しでもハンベエ達に不利な状況が現出すれば、蜘蛛の子を散らすように雲散霧消してしまう事がありありと見える、全く当てにならない兵士達なのだ。しかも、部隊編成をする暇(いとま)も無く、適当な指揮官を割り当てる余裕も無くハナハナ山を急発したのである。何故部隊編成をしなかったのか。理由は二つあった。一つは時間である。部隊編成をしていれば、迎撃の好機を逃してしまうだろう。ハンベエはハナハナ山に進軍して来るタゴロローム守備軍を途中で先に見つけて不意討ちを食らわせるつもりであり、それ以外に勝機を見い出していない。急がねばならないのである。