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Haruki Blog

(ふん、何を言いやがる

(ふん、何を言いやがる。心にどす黒い刺を含んでいても、上辺を飾り立てて人と言葉を交わし、当たり障り無く渡って行くのが作法とやららしいが、真っ平ごめんだぜ。)ハンベエは傲岸なタチであり、人に対する反感を胸中に唱える事等はあまり無い。気に入らない時は、誰に対しても面に露にする事を躊躇しない若者である。しかし、このラシャレーという老人は人間の厚みが違うのか、流石のハンベエも幾分心を押される処があるようだ。「ハンベエ、次につかぬ事を尋ねるが、その方、姫君と何か行き違いでもあったのか? どうもエレナ王女のその方に対する態度が解せぬ。」「・・・ふふ、Benenden Bilingual School行き違いとは物は言いようだ。王女とバンケルクの仲を知らぬではあるまい。バンケルクを破滅させた俺を快く思わなくても不思議ではあるまい。」「確かに、バンケルクは姫君の剣の師であったが・・・それにしても・・・。」「ああそうか。バンケルクが王女に求婚していた事までは流石のあんたも知らぬ事だったよな。」「何、バンケルクの奴、そのような事を・・・。」「ああ、王女はバンケルクをイイナズケって言ってたぜ。」「ばっ、馬鹿な事を、如何に男女の事とは申せ、一将軍の身で、ゴロデリア王国の王女に求婚するなどと。」「王女の方はまんざらでもない様子だったぜ。」「姫はまさかバンケルクと契りを・・・。」「おいおい、それは王女に対して失礼な想像だぜ。まあ、俺の見るところ、そんな関係ではなかったようだぜ。ただ、王女はバンケルクを恩人と呼んで、すこぶる好意を寄せていたようだ。」「恩人、何と幼い・・・。一介の将軍に過ぎぬバンケルクなどをそれほど迄に・・・。」「何せ、その関係でこの俺と斬り合いになったくらいだからな。」「斬り合いだと?・・・まさか、貴様、姫君に刃を向けたのではあるまいな。」「向こうから決闘を申し込んで来たんだぜ。後ちょっとで王女を斬り捨てるという処で邪魔が入ったがな。」「斬り捨てるだと、貴様、姫君を何と心得ているのだ。そのような事が許されるとでも思っているのか。」「ああ、何だ? まさか、あんた、王女は尊い身分の人間で俺はただの風来坊だから大人しく殺されろって言うんじゃあるまいな。」「そんな事は言っておらぬ。そもそもハンベエ、姫君の腕前はその方に及ばぬのであろう?」「・・・そうだな。俺の方が上だ。」「であるなら、断れば良かったではないか。決闘を断わった人間に斬り付ける人間か?姫君は。」「・・・。」ラシャレーの言い分にハンベエは虚を突かれた思いであった。ヒョウホウ者である自分は挑まれれば断れない、ハンベエはそう思い詰めていた。この若者は別にエレナを斬りたくてあの時、『ヨシミツ』を抜いたわけではない。このようにあっさりと、『断れば良かったではないか。』と言われてしまうと、あの胸を切り裂かれるような苦悩が酷く馬鹿馬鹿しいものに思え、拍子抜けする思いであった。言われてみれば、ラシャレーの言うとおりであった。断れば良かったのである。ハンベエが『お断りだ。』と言ってしまえば、しつこく挑んで来る事は有っても無法に斬り掛かって来るエレナでは無いのだ。くっくっ、くっと無意識にハンベエは腹を捩らせるようにして笑っていた。「なるほど、確かにそのとおりだ。一理有る。いや、あんたの言うとおりだ。俺はどうやら、ヒョウホウ者という事に捉われ過ぎていたようだ。いい事に気付かせてくれた。次はそうするぜ。」皮肉めいた口調ではなく、すこぶる素直な様子でハンベエの口がそう言った。「妙な処で素直な男だ。まあ、極めて遺憾であるが、それも不問にいたそう。さて、最後に聞く。その方、何しにゲッソリナに戻って来たのだ。聞けば、このワシに会いたかったらしいが。」「・・・いやなに、俺はラシャレー浴場ってのが大のお気に入りでね。今回の件では、あんたと完全に敵になるものと思っていたから、殺し合う前に、せめてそれを作った人間の顔なりと見て置こうと思ったのさ。そして、あわよくばラシャレー浴場にもう一度入っておきたいと思ってね。」

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